相続ってなに?
相続は、残念ながら身近な方が亡くなってしまった時に、必ず関わることになる手続きです。
相続とは、亡くなった方(被相続人といいます)の財産や権利義務を、法律上定められた相続人が引き継ぐことをいいます。財産には、不動産や預貯金といったプラスの財産だけでなく、借金などマイナスの財産も含まれます。
したがって、相続人は、その対応を適切にしないと、重要な財産を取得できなくなってしまうだけでなく、その意に反してマイナスの財産を取得してしまい、借金を背負ってしまうことにもなりかねません。
また、相続人など関係者からすると、身近な方が亡くなられて、精神的に非常に大きなダメージを受けている時期であるのに、行政、法律、税金など多岐にわたる手続きの対応に追われ、かつ、それらの手続きにおいては専門的知識を必要とするものも多く含まれるため、負担が大変大きくなってしまいます。
そこで、相続の手続きにおいては、ご自身だけでは対応が難しく、必要な専門家のサポートを受けながら対応すべき場合が多くみられます。
私も相続人になるの?
このような相続の手続きについては、財産を引き継ぐことになる相続人と呼ばれる人が行わなければなりません。では、この相続人には一体誰がなるのでしょうか。
この相続人については、亡くなった人が遺言を残している場合を除き、法定相続人と呼ばれる人がなることになっています。法定相続人とは、「相続が発生した際にはこの人が相続人になります」と民法が定めている人のことをいいます。具体的には、亡くなった人の①配偶者、②子ども、③直系尊属、④兄弟姉妹です。
この法定相続人については、常に相続人になるわけではなく、優先して相続人になる順位が決まっています。まず、①配偶者については常に相続人になります。しかし、②子ども、③直系尊属、④兄弟姉妹については、その②~④の順番で優先的に相続人になります(つまり先順位の人がいる場合には、後順位の人は相続人にはなれません)。
遺言がある場合を除くってどういうこと?
遺言とは、亡くなった人が、自分の財産を死後どうしたいかについて、生前に書き記したものです。
この遺言により、亡くなった人が、法定相続人のうちの一人だけに全財産を相続させると生前に書き残している場合があります。
また、自分の財産については、実は必ず法定相続人に渡さなければならないわけではなく、内縁の妻、友人、NPO団体、自治体などを指定して、財産を渡すことも可能です。
ですので、亡くなった人が生前に遺言書を作っていて、その遺言書により法定相続人以外の人や団体に財産を全部渡したいと書いていた場合、その指定された人や団体が財産を受け取ることになります。法律用語ではこれを遺贈といいます。
遺留分に注意
しかし、法定相続人(④兄弟姉妹以外)には、亡くなった人が残した財産について「最低限これだけはもらえる」という最低保証が法律上認められています。これを遺留分といいます。
上記のように亡くなった人が、法定相続人のうちの一人だけに財産を全部相続させるという遺言を残していたり、友人などに財産を渡すという遺言を残していたとき、この法定相続人の遺留分を侵害してしまう場合があります。
例えば、財産を受け取る人について、遺言で「友人に全部あげる」と指定した場合、それは法定相続人の最低保証分まで侵食してしまう可能性が高いです。このような状態のことを、「遺留分を侵害している」と表現します。
このように法定相続人のうちの一人だけに相続させる場合や、遺贈が遺留分を侵害している場合、他の法定相続人としては遺留分侵害額請求を行なうことができます。
相続って何をもらえるの?
相続人になると、亡くなった人の財産を相続し、受け取ることになります。この亡くなった人の財産を一般的に相続財産といいます。
この相続財産については、上記のとおり、預金や株式や不動産といったプラスの財産もあれば、借金というマイナスの財産もあります。
マイナス財産なんていらないのだけど・・・
亡くなった人の相続財産を詳しく見ると、預金や不動産などのプラス財産よりも借金の方が多く、相続したらトータルで借金を背負うだけ、という状況もよくあります。
このような場合、お金のことだけを考えれば当然相続なんてしたくないと考えるのが通常ですし、特別な理由がない限り相続しない方が賢明でしょう。
こうしたときは、相続自体をしないという選択をすることができます。これを相続放棄といいます。相続放棄をすると、相続人ではなかったことになるので、財産を受け取る権利がなくなります。ただ、マイナス財産だけではなく、プラスの財産についても一切受け取れませんので、注意が必要です。
相続財産はどう分ければいいの?
遺言が残されておらず、相続人が自分だけではなく他にもいる場合には、相続財産をどのように分けるか相続人の間で話し合わなければいけません。これを遺産分割協議といいます。
それぞれの相続人が相続できる相続財産の割合については、民法がケースごとに分けて細かく定めていて、これを法定相続分といいます。
例えば、亡くなった人に配偶者と子どもが2人いるケースでは、配偶者が1/2で、残りの1/2を子ども二人で等分することになっています。つまり、配偶者が1/2、子ども2人は1/4ずつとなります。
しかし、どの種類の財産を誰がもらうのかなど、具体的にどのように分けるかについては、特に決まりはありません。
財産の割合についても、上記の法定相続分に従った分け方によるとトラブルが起こる可能性が少なく一番無難ですが、相続人全員が納得できれば、法定相続分を無視した分け方をしても問題ありません。
このように相続にはさまざまな決まりや注意点があります。次のページの「相続の手続き」では、実際に相続が発生した時にどのような流れで手続きを進めていくかを解説します。
