相続が発生すると、相続人の調査、遺言の確認、相続財産の調査、遺産の分け方の協議、相続税の申告など、やらなければならない手続きは多岐にわたります。
しかし、それぞれの手続きで専門的知識が必要とされるため、何をどのように処理しなければならないのか、戸惑われる人も多いのではないでしょうか。

そこで、以下で、相続の手続きの流れについて、主なポイントを簡単にご説明します。

相続の開始と相続人の調査

相続は、故人(被相続人といいます)が亡くなった時点から開始します。また、死亡後7日以内に、死亡届を各市区町村役場に提出する必要があります。

まず必要となるのは、誰が相続人になるのかをきちんと調査し、確定することです。亡くなった人の戸籍謄本を役場で収集し、配偶者・子・親・兄弟姉妹など、法律で定められた順序に従って相続人が誰であるかを確認します。

遺言書の確認

次に重要なのは、遺言書の有無です。もし遺言があれば、遺産を分ける際には、まずはその内容が優先されます。
ただし、そもそも遺言が無効である場合もありますし、また、遺言が相続人の遺留分を侵害している場合には、遺留分侵害額を請求する権利が発生する場合もあります。
遺言書の種類によっては家庭裁判所での「検認」という手続きが必要な場合があり、その場合は自分で勝手に開封してはいけません。

相続財産の調査

亡くなった人にどのような財産があるのかがわからなければ、遺産を分けようがありません。また、そもそも相続していいのか、それとも相続放棄をした方がよいのかどうか、決めることができません。
そこで、相続財産として何があるのかについて、プラス財産とマイナス財産との両方をしっかりと調査します。

相続するか、相続を放棄するかを選択

相続人は、原則として相続開始を知ってから3か月以内に

①単純承認(プラスの財産もマイナスの財産も両方引き継ぐ)
②限定承認(プラスの財産の範囲でのみ借金などマイナスの財産を引継ぐ)
③相続放棄(プラスの財産もマイナスの財産も一切引き継がない)

のいずれの方針で進めるかを決める必要があります。

②限定承認か③相続放棄をするには、3か月以内に家庭裁判所でその手続きを行う必要があり、何も手続きをしないで3か月が経過してしまうと、自動的に①単純承認をしたことになります。

また、相続財産を勝手に処分すると、単純承認を選択したとみなされてしまいます。特に亡くなった人に借金がある場合には、相続放棄をしなければならない可能性がありますので、慎重かつ迅速な判断が必要です。

遺産分割協議

相続人が複数いる場合には、財産をどのように分けるかを話し合います。これを遺産分割協議といいます。
この協議がまとまれば遺産分割協議書を作成します。この遺産分割協議書は、不動産や預貯金について、亡くなった人から相続人へと名義変更をするために必ず必要になる重要な書類です。

また、遺産分割協議は、相続人の全員の合意が必要となります。ですので、相続人の間で話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所で遺産分割調停や遺産分割審判をする必要があります。

準確定申告

亡くなった人に事業所得や不動産所得、株式の譲渡所得等があり、もし生きていれば確定申告をする必要があった場合には、所得税の準確定申告をしなければなりません。所得税の準確定申告とは、亡くなった人に所得税の申告義務があった場合に、相続人が代わりに申告をして納税することをいいます。

この準確定申告については、亡くなった日の翌日から4ヶ月以内にしなければなりません。その期限が短いため、対象になる可能性がある場合は、税理士などの専門家に相談するとよいでしょう。

相続税の申告と納付

遺産分割協議により決定した相続財産の金額にもとづいて、それぞれの相続人は相続税の申告をし、その納税をしなければなりません。
この相続税の申告期限は、故人が亡くなった日の翌日から10か月以内です。この10ヶ月という期間については、実際に体験するとかなり短く感じるため、各手続きをスピーディーに進めていく必要があります。

相続税の申告・納付の手続きについては、相続財産の評価や控除の計算など専門的な知識が必要となるため、税理士に依頼して進めるケースが一般的です。

相続の手続きは複数のステップを踏んで進める必要があります
それぞれの段階で判断を誤ってしまうと、後々の争いや不利益につながる可能性があります。
より詳しい内容については、各項目のページで解説しています。